金メダルマン、なんていわれても、わからない人もおられると思うので軽く説明を。
「金メダルマン」は1980年代の前半、コロコロコミックに連載されていたギャグマンガです。ギャグものにしては比較的リアルなタッチで、今思えば「がきデカ」と「シェイプアップ乱」のブリッジのような存在だった気がします。
人気もマイナーなもので、当時のコロコロコミックでもけしてナンバーワンになるようなことはなく、下品さでは「超人キンタマン」や「ロボッ太くん」、くだらなさでは「ゴリポンくん」に劣っており、そういう意味でも中途半端な位置づけでした。
「金メダルマン」とは単行本にまとめるにあたっての便宜上のタイトルで、連載時は「金メダル先生」から始まり、後半になって「金メダル暴走族」に落ち着くまで毎回タイトルを変えていました。
そもそも元金メダリストが先生だの刑事だの力士だのと次々職業を変えていくというのは、ある種のリアリズムを感じずにはおれません。まぁ育成に回らなかった金メダリストの人生ってなんだかそんなもんな気がするし。
脇役はほぼ固定ですが、「金メダル暴走族」に定着するまでは軽いスターシステムを採用しているのもちょっとおもしろい。でも手塚治虫のようなスターシステムとはちょっと肌合いが違ってるというかね。うまくいえないんだけど。
さて、今から10年ほど前の話ですが、ふとしたきっかけで「金メダルマン」について調べたことがありました。
単行本はもっておらず、古本屋でもなかなか見つからない。そこで最終手段として国会図書館で単行本とコロコロコミック掲載分を読破したりしたんです。
なぜにそこまで「金メダルマン」に情熱を燃やしたのかは忘れてしまいましたが、とにかく友人と盛り上がり、「ちゃんと調べないと気が済まない」心境になってしまったのです。
そのときの資料はすでに紛失してしまい、手元にはなんにもないので記憶のみで書いていきますが、これが想像してたよりずっとおもしろくてね。それも「懐かしい!」というより「え?こんなとんでもない漫画だったっけ?」的なおもしろさ。
子供の時に読んだ時に心に刻まれて、再読してもすげぇと思ったのが、たしか「金メダル力士」の回だったと思うけど、とうとう浮浪者になったたかしが腹を減らしていると、浮浪者の先輩格の芦田が寿司(もちろん寿司屋のゴミ箱から失敬したもの)をわけてくれるという描写。
たかしはこれを泣きながら食うんだけど、なんか生々しいですよねぇ。
こういうやけにリアルな表現を児童誌に持ち込んだのはすごいと思うし、またうまい。おとなになって再読してその辺にやけに感心しました。
アタシはね、調べる前まで沢田が、いや沢田ってキャラがいるんだけど、そいつをずっと女だと思ってたんですよ。「女と思ってた」ってぐらいだから実は男だったんだけど、髪型とかもなんだか女っっぽい。
しかも他のキャラも、河場とか芦田とか、いや主人公の五輪たかしもそうなんだけど、どうもみんなホモセクシャルっぽいんですね。もちろんそんな描写はないし、女性がでてきて「かわいー!」なんてこともあるんだけど、バランスとってるだけじゃないの?って気がする。
まぁホントのところはノンケのアタシにはわかりかねますが。一回本物のゲイの人に読んでもらって判断してもらいたいな、とはずっと思ってんですけど。
あと、子供の頃のイメージよりずっと下ネタが少なくて。
下ネタで「あ」っと思ったのが、少年野球に混ざったたかしがバットを持たないでバッターボックスに入って、ピッチャーがボールを投げるとイチモツがピクピクとなってホームランを打つ。で子供のセリフ
「3本足打法だ!」
今読むと笑えるけど、けっこう直接的な下ネタですよね。だいたいこの当時、股間が勃起するという表現自体がほとんどなかった時代だし。ある意味すごいですよね。
でもこれぐらい。あとはうんこを我慢するために鉄棒にまたいだのがムーンサルトになって金メダルにつながったとかぐらいかな。
しかし・・・ですな、いやはやなんとも、全然児童誌向けの漫画じゃないですね、これ。
やけにシビアな風刺が入ってるし、奇妙なほどリアルな生活感があるし、人間関係はゲイの世界のそれに倣っているし、バイクとかの描写も凝ってるし、下ネタもうんことかチンポコではなくて「ペニスの勃起」とかだし。うーん、なんじゃこりゃ。
「今再評価が問われる、隠れた名作」とかは全然思わないけど、濃いファンがひとかたまりぐらいいてもいいんじゃないかと。買い被りですかね。