さてさて今日、映画公開以来、実に23年ぶりに「21エモン 宇宙へいらっしゃい!」を見ました。
ずっと前に神田小川町で300円ぐらいで売ってたんで買っておいたんですけど、なんとなく見る気がしなくて。
理由は簡単で、今更みてもってのがあってね。でも安売りビデオ店で目にした瞬間「あ、買おう」、「手元に持っておきたい」と思ったのは、映画館でみた特報を思い出したからなんです。
「21エモン」が公開されたのは1981年の夏なんだけど、春に「ドラえもん のび太の宇宙開拓史」が公開されまして、で、「宇宙開拓史」の上映前に「21エモン 映画化決定!」が<特報>として流れたんです。
これにはかなり狂喜乱舞しました。「21エモン」は相当好きな作品だったし、今と違ってアニメ化にすごい価値のあった時代ですから。
んで実際観て思ったんですが、もういかにも<アニメ化にすごい価値のあった時代>の作品でした。
というのもね、作画とかかなり酷いんですよ。ロケットの描写も「ギャグ物だから」と許されるレベルじゃない。でもなんだかとても古き良きアニメを観ている気がして。BGMもかなり「ドラえもん」から流用しているし。懐かしいというかなんというかね。
感心したのが脚本がよくできていること。
その後(といってもずっと後だけど)「21エモン」はテレビ化され、その時も映画化されました。それが「21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス」なんだけど、せっかく「モジャ公」のエピソードを流用しているにもかかわらず、ほとんど緊張感のない、やたらヌベーッとした出来映えでした。
「宇宙へいらっしゃい」は「宇宙いけ!裸足のプリンセス」に比べるとエピソードらしいエピソードもないのに、細やかな起伏をつけて全然飽きることがなかった。
このすぐれた脚本を書いたのはベテランの辻真先。意外と軽視されがちだけど、アニメといえども脚本は最重要事項ですよ。
声優もいい。公開時から20エモンの二見忠男だけは違和感があって。いや俳優としての二見忠男は大好きなんだけど、アタシの中で「20エモンは肝付兼太だなぁ」と勝手に思い込んでだからね。たぶん「はじめ人間ギャートルズ」のイメージがあったんだろうけど。
モンガーの杉山佳寿子も今見るとコロ助とカブっちゃうんだけど、悪くはない。潘恵子(ルナ)は色気があるし、丸山裕子(オナべ)はベテランだけあって巧い。あ、もちろん主人公・21エモンの井上和彦もいいですよ。
結局脚本にしろ声優にしろ専門職って感じがする。作画はあんまりよくないけど(21エモンが植田まさしキャラに見えるのはいくらなんでもマズいっしょ)、演出もしっかりしている(監督はこの後映画「ドラえもん」を支える芝山努)。
きっとこの辺が古き良きアニメって感じさせるんでしょうね。
さいきんのアニメを見てて不満なのは脚本の出来が気になることで、たとえありがちなストーリーでも小さなアイデアとかでいくらでもおもしろくできるのになぁと。どうも<初期アイデア>にばかり力を入れて、細かい部分を消化しきれてないような気がするんです。
声優もそうでしょ。巧い人もいっぱいいるけど専門職の仕事って感じはしないなぁ。
ところで、こないだ友人の名刺をつくっていた時(一応デザイナーなんで)、その友人が見本に出してきた名刺に感動しっちゃったんですよ。それはいかにも名刺屋さんの職人がつくったようなもんで、これはアタシはが100年かかってもつくれないなぁと。どこがどうとかじゃない。すべてにおいて完璧に計算されたバランスを感じたんです。
昔のアニメ(特に東京ムービー系=シンエイ動画もそうです)は、こういう職人っぽさが垣間見えて、ああプロの仕事だなぁと思える。でもさいきんのアニメはいくらよくできていても、修練さえすればいつか自分にもつくれるんじゃないかと思ってしまうんです。この差はいったい何なのか、アタシもよくわからないんですが。
なんだかあまりにも話がそれすぎたんでこの辺にしておきます。
「21エモン」ではなく名刺の話をしたいんだけど、この名刺、友人に見せてもらってから軽く20年は経つのに、いまだに憶えている。んで、いまだに超えられそうな気がしない。 いやね、デザインをやってるといつも同じことを思うんだけど、完璧ってぜんぜん完璧じゃないよな、と。何というか、唸るほどすごいものって絶対に<隙>があるんですよ。で、その<隙>ってのがどう見ても計算して入れた感じがしなくて、かといって偶然でもない。あれはいったい何なんだろ。 |
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