1992年に行われた「ガチョン!in the night(いんじゃないの)~谷啓のハロホロ・ワールド」を実際にみた人はかなり少ないんじゃないでしょうか。
クラブ・クワトロをはじめ比較的小さな小屋で行われたというのもありますし、客の入りも芳しくなかったといいます。
なにを隠そう、アタシもこのライブには行きませんでした。厳密には行けませんでしたといった方が正しいですが。
行けなかったアタシがこのライブをみたことがあるのは、同年の夏にNHK-BS2にて「植木等ザ・コンサート“今日もやるぞやりぬくぞ!”」とセットで放送されたものを見たからです。
この中継は事前の予告もあまりなく、これさえも見逃した人も多いと思います。
植木等のコンサートが「クレージーソングを楽しむ」ためのものとするなら、谷啓のライブは「音そのものを楽しむ」ものだといえるでしょう。演奏は自身のバンド「スーパー・マーケット」が担当し、いやこの表現は正確じゃないな。ふだんのスーパー・マーケットのライブにプラスして、アルバム「ハラホロ・ワールド」をフィーチャーした、という雰囲気でした。
ライブをみてまず感心させられるスーパー・マーケットの音のすばらしさです。メンバーはジャズメンとして腕のある人たちで、コンボ・バンドならではの非常に気持ちいい一体感を演出しています。
MCは谷啓で、往年のクレージーの音楽コントを彷彿させるような、「ノりすぎて止まらなくなる」や「ノせるだけノせておいてツッコむ」といったギャグも散見されます。
曲目は以下の通りです。
1.「愛してタムレ」
2.「世界は日の出を待っている」(演奏のみ)
3.「ラサス・トロンボーン」(演奏のみ)
4.「スキューバー・ダイバー」
5.世界音楽めぐり(演奏のみ)
「ブルガリアの夜明け」
~「アルプスの風」
~「コブラツイスト」
~「コンドルは飛んで行く」
6.「ハーレムノクターン」(演奏のみ)
7.「演歌・ハーレムノクターン」(演奏のみ)
8.ビリーボーン・メドレー(演奏のみ)
9.「アリババの日々」
10.「スカ・ヘンチョコリンなヘンテコリンな娘」
11.「今宵カリビアンショー」
12.「怪奇ラップ現象」
13.スイングジャズ・メドレー(演奏のみ)
「スイングしなけりゃ意味がない」
~「スイング・スイング・スイング」
14.「星に願いを」(演奏のみ)
・アンコール
15.「愛してタムレ」
曲目で(演奏のみ)とある曲は、当然のことながら谷啓もトロンボーンで参加しています。
なにしろ実際に観にいったわけではないので、テレビで放送されたものが当日の全セットリストかどうかはわかりません。はっきりとカットも確認できます。しかしこうみてみれば「ハラホロ・ワールド」からの曲はたった4曲しかやっていないのです。特に先行シングルとして発売された「アイヤ・ハラホロ」さえも演っていません。
スーパー・マーケットの通常のライブでは谷啓が歌うことはほとんどないらしく、たぶんこれでも大盤振る舞いなのでしょう。つまり谷啓のライブの趣旨が「歌を楽しむ」ためのものではなく「音そのものを楽しむ」ことに主眼が置かれていることは明白でしょう。
実際このライブのクライマックスは「ハラホロ・ワールド」からの楽曲ではなく、演奏そのものと谷啓の進行部分だといってもよく、特にラスト間際で演奏されるスイングジャズメドレーは、ただ聴いているだけで非常に心地いいのです。
クレージーファンとして気になる部分としては「スカ・ヘンチョコリンなヘンテコリンな娘」だと思います。
「この間東京スカパラダイスオーケストラといっしょに演りまして・・・」とスカへの興味を持ったという趣旨のMCからはじまる楽曲は、スカとしてはイマイチなものの、谷啓は歌に、そして間奏にはトロンボーンにと大奮闘しています。
とまぁ、カタい話はこのぐらいにして。
あらためて手持ちのビデオで確認したのですが、とにかく演奏がバツグンで「谷啓がやりたかったのはこういうことだったのか」ということを再認識しました。個人的に特に圧巻だったのが、アンコールの「愛してタムレ」のあとの「カクテル・フォー・ツー」で、これは演奏ではなく、谷啓がスパイクジョーンズのレコードにあわせて<当てぶり>をしていくのですが、これがひとり芸として完璧に完成されているのですよ。
ハリウッド喜劇を浴びるように観た世代の人にしかできないみごとなヴォードビリアンぶりで、もし谷啓ってどんなタレントだったの?ってきかれたら、このシーンをみせるだけでその突出ぶりがわかるんじゃないかと。
もちろん映像を持ってるからこういう文章を書けたのですが、何しろ時代はVHSの時代で、映像は当然のことながら音もかなり悪いんですよ。 何というか、全体的にジッターが乗ってるし、音も若干割れ気味でね、一応リマスタリングってほどじゃないけど波形ソフトで多少ノイズを消したけど、高音質まではいかない。 これさ、何とか再放送してくれないかな。今の環境ならノイズゼロで録画出来るんで、是非。 |
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