王道中の王道「ハリスの旋風」
FirstUPDATE2004.12.19
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ここのページをずっと読んでおられる方の中には、アタシをかなりヘンテコなヤツだと思ってらっしゃる方がいるかもしれませんが、これでも昔はフツーの少年だったんです。

中学生の時にはガンプラもつくったし、「機動戦士ガンダムIII・めぐりあい宇宙(そら)編」を徹夜で並んで観に行ったし、「うる星やつら」の最初の映画だって観にいったし。ね?全然フツーでしょ?
え?オタくさいって?そうでもないですよ。たしかにアニメージュとかホビージャパンとかは読んでたけど、当時はフツーの中学生もそんなもんでしたし。

少年ジャンプとか読んでたのって、いつまでだったっけなぁ。たぶん高校ぐらいまでは読んでた気がする。でも熱心に読んでたのって「ドラゴンボール」とかぐらいじゃなかったっけか。それも途中で「もういいや」と思って読まなくなったし。
「ドラゴンボール」を読まなくなったのは、本当によくいわれることだけど、敵のインフレがすごくなりすぎたってのはあります。あと何度でも生き返るってやつ。これだけで戦いに緊張感がなくなったと思うんですよね。

こういう王道少年漫画は、いかに十字架を背負わせるかが勝負みたいなところがあって、単純に「戦うことが好き!スポーツが好き!」とかじゃ絶対成立しない。やっぱ読者が感情移入できないからね。
んでずっと後になってから、こういう王道少年漫画の原点ともいえる「ハリスの旋風」を読んだんですけど、これがビックリするぐらいおもしろいんですよ。もしかしたら直接的・間接的に今の漫画、たとえば「ワンピース」なんかにも影響を与えているんじゃないでしょうか。

十字架の背負わせ方って書いたけど、「ハリスの旋風」は本当にうまいと思う。物語において読み手が感情移入してしまう要素として「主人公が良かれと思ってしたことが誤解され、まわりから非難の的になる」というのがありますが、それがね、本当にきっちり描けているんですよ。主人公の石田国松は素行が悪いからそういうことになってしまうんだろうけど、でもやっぱり読んでてすごく辛い気分になってしまう。
でもそこでちゃんと国松の行動をみてた人がいて、国松が絶対絶命のピンチになった時に助けにきてくれる・・・・。これは黄金パターンにすぎないんだけど、それでもやっぱ泣いてしまうのです。

読み返してみると、脇役の名前の付け方とかうまいんですよ。漫画の脇役なんて、それこそこないだ書いた<ムナシおじさん>じゃないけど、名は中身をあらわす、みたいなのか、それともキャラクターに全然結びつかないような適当な名前かどっちかですけど、「ハリスの旋風」の登場人物はごくありふれた苗字とかなのに、すごくその
キャラクターにあった苗字が用意されている。こういう芸当はなかなかできるもんじゃないですよ。

さてさて、ちばてつやの作品の中では「ハリスの旋風」が一番好きなのですが、たとえば「ハリスの旋風」と似た設定の「おれは鉄平」あたりはどうかというと、うーん、かなり読み込んだんですけど、あんまり好きじゃないなぁ。一見石田国松と鉄平は似たキャラクター設定ですが、鉄平はキャラクターへの感情移入がしずらいんですよ。だってあまりにもムチャクチャじゃないですか。行動原理がなさすぎるというかね。どうもそこが合わなかった。

石田国松は、名前からも想像できる通り、森の石松が原型になったであろうと思われるキャラクター造型で、おっちょこちょいでケンカっぱやくて、義理人情に厚い、という。わかりやすさ満点なんだけど、やっぱ日本人なんかねぇ。素直に感情移入ができてしまうんですよ。
おチャラとの淡い恋模様もすごくいい。なんとなくこのふたりが惹かれあうのが、理屈じゃなしにわかるし。

なにぶん古い漫画なんで、読んだことのない人が大多数でしょうが、一読の価値のある漫画です。機会があればぜひ!ということで、ではでは

文中にはどこにも<王道>という言葉はないんだけど、もしこれから少年漫画を描きたい!なんていう漫画家志望の人なら「ハリスの旋風」は絶対に読んでおくべき漫画だと思う。というか「ハリスの旋風」と違う設定で似た話を描けるようになってから自分の色を出していくってのが一番の早道なんじゃないですかね。
いや、何なら「王道フィクションの最高のサンプル」として「ハリスの旋風」を徹底的に解体してもいいかもね。やるかはわからんけど。




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