さてさて、ある程度の都市にはJRだけではなく私鉄というものが走っています。
まさに「庶民の足」であるそれらの私鉄のことを「鉄オタ的観点からではない」、つまりごく普通の、ひとりの乗客として見た時、どういうふうに見えるのか。
幸い、いや幸いでもなんでもないけど、根っからの根無し草であったアタシは何のことか、東京、神奈川、大阪、神戸、福岡、そしてロンドンといった街に居住経験があったりします。
鉄オタではないアタシは、それらの街に住み、当たり前のように各鉄道を利用しておったわけで、結構幅広く書けるのではないか、という気がしましてね。
てなわけで「地元の人や鉄オタなら当たり前すぎるくらい当たり前、だけど他地方の人は意外と知らない、アタシが利用したことのある鉄道と沿線のイメージ」をこれから書いていきます。
あ、せっかくなので、こちらもざっくりとにはなってしまうのですが、関東、関西、福岡のJR事情も併記しております。
ではどうぞ。
まずは関東圏から。
◇ 西武
おそらく関東に住んだことのない、かつ黄金期の西武ライオンズを憶えておられる人は、西武鉄道にたいして決定的な誤解をしているような気がする。
まず、西友と西武鉄道に直接的な関係はありません。(今は、ね。いうまでもないけど昔はあった)
だから西武鉄道が親会社であるライオンズが優勝しても、西友でセールをやる時にでる広告には『優勝おめでとうございます』という他人行儀な言い回しをしている。つまり巨人が優勝してビックカメラがセールをやるのとあまり変わりがないのです。
では西武鉄道はどんなイメージなのか?
特に古い野球ファンなら、かつての西武ライオンズの金満ぶりから<西武鉄道=ゴージャス>というイメージになるのも無理はありません。
しかし一度でも西武線に乗ったことのある人なら、このイメージがいかに実態とかけ離れたものかわかるでしょう。
おそらく大半の東京人にとって「埼玉の(そう高級でない)ベッドタウンを走るローカル線」なのではないでしょうか。
アタシなども「西武沿線に住んでいる」と聞くと、ああ、庶民的な街(もしくは田舎)に住んでいるんだなと思ってしまう。
だから逆に言えば、昔から西武沿線に住んでいる人からすれば<西武=金満>というイメージの方が不思議でならないのではないでしょうか。
あ、そういえば2020年に出張で秩父に滞在した時に久しぶりに西武を使いましたが、まァ、とんでもない山の中を走るんですね。ケータイの電波さえ届かないようなところを延々走るってのは軽い恐怖を感じました。
◇ 東武
東上線しか知らないし、東上線自体たいして知ってるわけじゃない。そんな心持たない感じですが。
東武東上線といって思い出されるのは、恐ろしいほどの満員電車ぶりです。あれはもう二度と味わいたくない。
あとはビックカメラのテーマソングです。テーマソング通り、池袋の東武百貨店は西部(つーか西口)にあります。
◇ 東急
田園都市線はあまり知らないので東横線に絞って書きますが、どこの駅も雰囲気のいい、こじんまりした駅って感じです。途中でクロスする横浜線の駅周辺と比べると一目瞭然です。そのクロス地点である菊名駅は、横浜線の乗り口がある西口はJRムード、東横線の乗り口のある東口は東急ムードなのが面白い。
系列に東急ストアというスーパーがありますが、別に東急沿線にしかないというわけでもなく、東京と神奈川県の至るところにあります。
「東の阪急」といわれるくらい良いイメージがある東急ですが、東急ストアは高級スーパーってわけじゃないんだよね。
個人的には大倉山のあたりに思い入れがあります。何かあの辺、好きなんですよねぇ。
◇ 京急
東急が「東の阪急」なら、京急は「東の阪神」ですね、完全に。
海沿いの工業地帯を結ぶ沿線ですので、当然イメージも超庶民的。個人的には川崎が「如何にも京急の街」って感じがします。
何かもう、川崎っつっと異様なまでに怖いってイメージが強くなってますが、ま、間違いではないんだけど、川崎ほど便利な街はないですよ。そういう意味では大好きです。
どうしても川崎のイメージに引きずられて「京急沿線=怖い」って感じかもしれませんが、南に行けば行くほど観光ムードが強くなるっつーか。それこそ逗子なんか完全に観光ムードだもん。
◇ 小田急
相模大野から西、つまり小田原へ向かう路線はほとんど乗ったことがないので、新宿~片瀬江ノ島までの話を。
小田急沿線といえば「わりと雰囲気がいい、田舎を走る路線」になりますか。東京近郊の人には下北沢に行く路線なんで田舎といわれてもピンとこないかもしれないけど。
あと小田急といえばピポピポーです。これじゃピーナッツファン以外意味わかんないけど、要するにロマンスカーのことです。
ピポピポーは好きなんだけどね。すんごい贅沢気分が味わえるし。
あ、それと東京←→藤沢間を移動するなら圧倒的に小田急の方がオトクです。ま、多少時間はかかりますが。
◇ 相鉄
沿線に住んでなくても免許を持ってる神奈川県民なら必ずお世話になります。二俣川ってとこに免許センターがあるからね。
相鉄ローゼンもお世話になってる人がいっぱいいるはずです。沿線関係なしにあるし。
◇ 江ノ電
江ノ電沿線はとにかく思い入れが強い。どこの駅とかじゃなくて全部の駅に思い入れがあるんです。
とくに藤沢から乗った時、腰越を越えて海が見える瞬間はやっぱ興奮します。
そういや藤沢の小田急百貨店って元は江ノ電百貨店だったんだってね。あんな小さい鉄道会社が百貨店を持ってたってのも不思議な感じがしますね。
オマケ情報としては、江ノ電は完全に12分間隔で電車が来ますので、藤沢と鎌倉の両始発駅の時刻表を「0分、12分、24分、36分、48分」ってのを憶えておくと便利です。
で、追記。2023年3月18日から列車の運行間隔が12分から14分に変更されてしまいました。
いろんな事情があるとはいえ、うーん、と思ってしまう。もう沿線に住んでないのに。
◇ 湘南モノレール
レジャーです。乗ること自体が。
仮にも近隣住民の足となる公共交通機関でここまでレジャーになる乗り物を他に知りません。
はっきりいって下手なジェットコースターよりよほど怖いです。足なのに。
あと、ずっとPASMOに対応してなくて不便きわまりなかったんだけど、どうやら2018年の春から対応したみたいです。
って遅すぎるわ。江ノ電が対応してから10年も経ってからって。ま、わかるけどさ。
◇ 東京メトロ&その他関東圏の地下鉄
東京メトロはとにかくすぐ電車が来ます。これは本当にすごい。他の地方に住んでて久しぶりに東京メトロに乗ると感動するほどです。
もうひとつ。最近駅構内で直接乗り換えられない駅間の乗り換え時間が60分に延長されたのが素晴らしい。
んで横浜市営地下鉄ですか。何というか、異様なまでに混む区間とガランガランの区間の差が激しすぎる。あれは何とかならんのか。って地下鉄なんてそういうものだけどさ。
アタシ個人としましては終点の湘南台の空気が大好きです。
◆ 関東圏のJR
どうもね、上野東京ラインってのが出来てから著しくわかりづらくなったね。
あんなの別に「東海道線、宇都宮線直通籠原行き」とかでいいじゃん。何で中途半端に、東京←→上野間なんて短い距離に名称をつけてわかりづらくするのか、さっぱり理解出来ん。
あと湘南新宿ラインもそうだけど、ラインって何だよ。やるんだったら全部、例えば山の手ラインとか総武ラインとか全部変えろよって思っちゃう。
続いて関西圏に参ります。
◇ 近鉄
路線距離は日本一。系列の百貨店も全国に展開している(していた)などを考えても、日本で屈指の鉄道会社といってもいいでしょう。
ただあくまでも<都心部はほぼ走らずローカルに伸びるだけ>の路線なので、長年大阪に住んでいても一度も近鉄に乗ったことがないという人も多いと思います。大阪の場合、東京に比べて通勤圏が狭く、近鉄沿線に住んで市街地で働く人は基本的に少ないはずです。
車両や駅も新しい古い関わらずきわめて庶民的で、また系列のスーパー(近商ストア)が併設されている駅も多く、まさに庶民のための鉄道といえるでしょう。
◇ 南海
ひとことでいえば、近鉄をやや高級にしたようにしたイメージですか。ま、ちょっとお上品じゃない地域も走ってるんですが。
それはそうと、南海の難波駅と髙島屋は隣接しているので、アタシはずっと髙島屋を南海の系列だと思ってたんです。(資本関係はあるみたいだけど)
阪急なら阪急百貨店、阪神なら阪神百貨店があるからね。そういうもんだと思うよな、特に子供なら。
◇ 阪堺
これまた始発駅がどっちの路線もあまりお上品じゃないところなんで、良いイメージはないかもしれません。
けど実際乗ってみると、なかなかのんびりムードで悪くないのです。
◇ 京阪
テレビカーがなくなった今、京阪のイメージは珍名駅のオンパレードだけになったような。
初見じゃ絶対読めない「野江内代」とか「放出」とかね。そもそも「枚方」が普通の読み方じゃないし。
なにしろダイエーの第一号出店の地であり、大阪のオバちゃんのメッカといっていい千林駅を擁しますからね。沿線の雰囲気は推して知るべし、というか。
千林にはアタシも長いこと行ってないんだけど、あの「♪いちじゅうひゃくせん せんばやし せんばや~ししょーてんが~い」ってテーマソングはまだ流れてるんだろうか。って検索したら面白い動画が見つかった。
そうだよな、あれはもう、こうなるよな。
◇ 阪急
もう完全に<セレブ路線>であり、沿線には芦屋をはじめ高級住宅街が数多くあります。系列のスーパー(阪急オアシス)も若干ではありますが高級志向で、おそらく「阪急沿線に住む」ことは、一種のステータスになっている感すらあります。ま、最近はオアシスもついに<特売>をやり出したみたいだけどね。
アタシは小林一三を大リスペクトしている人間なので、やっぱ阪急は好きなんです。とくにあのマルーンカラーですか、あの色は本当にいい。
◇ 阪神
大阪と神戸をむすぶという、阪急とほぼ同じ地域を走っているにもかかわらず、イメージは天地ほど違います。阪神のイメージは、いわば<超庶民>と言えるもので、とにかく<プロ野球のオーナー会社>というイメージが強いのも特徴です。
どうしても阪神と言えば尼崎のイメージがあるかもしれませんが、あの辺はね、アタシも多少は<ハンアマ>(阪神尼崎のこと)の事情を知ってるけど、マジで事情が事情だから。
あとどうでもいいけど、ダウンタウンのふたりの実家の最寄り駅っつーか最寄り路線はJRだから。JR尼崎はキューズモールとか出来て変な空気はだいぶなくなりましたね。
◇ 神戸高速
何しろ「車両を持たない電鉄会社」ですからね。もうホントに、阪急・阪神と山陽を繋ぐためだけの路線で。3駅しかないし。しかも高速神戸~新開地駅間は地下で繋がってるし。
この地下道、もし興味のある方はぜひ歩いてみてください。あんまり詳しく書かないけど。ま、自己責任ってことで。
◇ 神鉄
通学で毎日使ってたんだよな、アタシ。ま、山っ側に向かう鉄道なんで用事のない人はとことん乗る機会がないでしょうが。
それにしても菊水山駅が正式に廃駅になったのは残念。菊水山停車の普通に乗ったら、なんとなく当たりの気分で良かったのに。
◇ 山陽
姫路方面に行くことがあんまりないんでね。行く時もJR使うし。
山陽といわれて思い出すのはドレミファ噴水パレスのCM。サンテレビでよく流れてたやつです。検索すればYouTubeで見れます。
◇ 関西圏の地下鉄
まずは大阪からですが、駅舎っつーか地下鉄だから駅舎っての変だけど、プラットフォームの形状がアーチ状で妙にカッコいいんです。
んで「大大阪地下鉄行進曲」ですね。1933年に作られたってことでモロ、戦前モダニズムの時代の歌です。だからこれを口ずさめば気分は一気にタイムスリップします。
次は京都だけど、どうも地の人間じゃないからだろうけど、方向がつかみづらい。結構間違えて反対方向行きに乗ったりしてました。
最後は神戸。うん、どっちの路線も心配になるほどガラガラですな。大丈夫か?(追記・いやまだ)
とくに海岸線は鉄人28号推し(というか三国志を含めた横山光輝推し)がすごいんだけど、あの発車メロディは気になる。「亜麻色の髪の乙女」っぽいんだけど微妙に違うっつー。
あ、ついでにポートライナーについても書いておくか。六甲ライナーは今まで一回も乗ったことがないので割愛。
信じてもらえないかもしれないけど、ポートライナーが出来た当初、車両も駅舎もメチャクチャ未来感を感じたんですよ。もちろんポートピア81という未来感満載の博覧会に行くために、ポートライナーなるものに初めて乗ったんだからそのイメージも付加されてたとは思うんだけど、今でもどうしてもポートライナー=未来ってイメージが強くて。もうだいぶ古いんだけどね。
◆ 関西圏のJR事情
正直言って、一時期まではすんげえ感じ悪かったんですよ。あ、駅員がね。
それが阪神淡路大震災と福知山線の事故から、あきらかに応対が変わった。いい意味で。相変わらず遅れまくるけど。
お次は福岡。っつっても福岡の私鉄といえばほぼひとつだけですが。
◇ 西鉄
路線こそ短いものの、車両・駅ともに関西の近鉄と非常に似通ったイメージがあり、おかしいのは近商ストアと西鉄ストアのイメージはほぼイコールであるといっても差し支えありません。
◇ 福岡の地下鉄
どう考えても福岡市民にとっては西鉄よりも地下鉄の方が「足感」が強いように思う。んなことを言ったら一番強いのは西鉄バスだろうけどさ。
福岡の地下鉄は飛行機で福岡に行った時に威力を発揮する。あんな便利な路線があるか。一本で博多駅にも天神にも行けるんですぜ?しかも所要時間も短いし。
◆ 福岡のJR事情
なんだかんだ、関東にしろ関西にしろ「どっちにしろJRなしでは、いろいろ行くにはしんどい」と思うんだけど、福岡はぜんぜん違いますね。JR沿線に住んでたり職場がないとまったく乗る必要がないというか。
でも雑餉隈はいいなぁ。あそこは思い入れがある。
そういえば友人のカメラマンにね、雑餉隈でポートレートを撮ってもらったことがあるんですよ。自分でいうのもアレだけど、我ながらイケメンです。って完全に友人の腕なんだけど。
最後は「アタシが居住していた」以外の理由は何もなく、イギリスはロンドンです。
◇ 地下鉄
イギリスでは地下鉄はサブウェイとは言わずアンダーグラウンド、もしくはチューブと呼ばれています。
何故チューブかというとトンネルの形状が丸く掘られていて、当然車両もカマボコのような形をしているんです。ま、イギリス人はカマボコとか知らないからチューブ状でチューブだと。
そんな形状の車両だからかなり狭い。狭いんだけど、それはそれでいい感じです。
向こうにも「オイスターカード」というSuicaに近しいものがあります。オイスターカードで乗り降りした方が圧倒的にオトクなので、ロンドンに行った際には是非ご購入を。あ、あと時間帯によって自動的に料金が変わるので、その辺もご注意を。
もうひとつ。これは日本に住んでる者としては信じられなかったんだけど、ロンドンってクリスマスは地下鉄も休みなんですよ。一日、まったく電車が動かない。これも要注意です。
◇ オーバーグラウンド、他
しばらくロンドンに行けてないのでシステムが変わってるかもしれないけど、向こうの鉄道(≠地下鉄)って発車ギリギリにならないとどのプラットフォームに電車が着くかわからないんですよ。
もちろん電光掲示板に表示はされるんだけど、5番プラットフォームってなったらその電車に乗る人はあわてて5番に足を急ぐと。あれ、何とかならんのかな。なってたらスマンね。
これは地下鉄とか全部含めてだけど、一番好きなのはやっぱキングスクロス周辺かな。とくにキングスクロスに隣接する、ユーロスターの発着駅でもあるセントパンクラスの駅舎はマジですごいです。外観は超レトロ、内装は超近代的というか未来感満載。
あ、もちろんユーロスターも乗ったことがないので割愛。
もうひとつ、ロンドンつながりで。
ここまで鉄オタ的視点を完全に抜いて(そもそもアタシが鉄オタじゃないし)書いてきましたが、もし多少なりとも鉄道に興味がおありでしたらコベントガーデンにあるトランスポートミュージアムをオススメします。鉄オタじゃなくても楽しめるし、とくに昔の地下鉄のポスターが掲示してあってこれが本当にカッコいいんだけど、ここ、入場料が若干高いんだよね。
高いったってしれてるけど、大英博物館とかナショナルギャラリーが無料なもんで、どうしても安易にオススメは出来ないというか。
こんな感じで終わります。何か抜けてるような感じがしないでもないけど、まァいいか。
2004年に初稿をアップした時は「ヤキウノウワゴト・鉄道会社のローカルイメージ」という野球関連のエントリとして、んで2018年に改稿した時に「ローカル鉄道会社のざっくりしたイメージ」に改題した上で野球の話を大幅に割愛した上で一般的なエントリにしたのですが、再び2021年に改々稿して「やぶにらのローカル鉄道大全」になったという。 こんなタイトルの流転があるエントリも珍しいわ。 で、2023年10月に若干補足を入れました。さすがに公共交通機関の話なので、古い情報をそのままってのはマズいですからね。 |
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