昭和の歌謡曲・再生産の壁
FirstUPDATE2004.7.21
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去年(現注・2003年)発表された歌謡曲の中で、アタシが文句なしの名曲だと思ったのが林明日香の「ake-kaze」だったんだけど、たぶん賛同者は少ないと思います。

※現注・ニコニコ動画に「ake-kaze」があったので貼っておきます。


最初にこの曲を聴いた時、歌詞なのかメロディなのかトラックなのか、それともヴォーカルなのか、何がいいのかとっさに判断がつかなくて、わりと丹念に聴いてみたんですが、これがいまだによくわからない。
わからないんだけど、聴けば聴くほど「あざとい楽曲だなぁ」と思うようになったりもしたんですね。

なにか「<いい曲>ができた」のではなく「<いい曲>をつくろうと狙ってつくった」みたいなね。あまりにもいろんなところに目配せしすぎている。そういうスケベ根性とでもいうのでしょうか、それが透けてみえるんですね。いや、なにしろ「ルックスが売りではない」現役中学生が歌うのだから、そういう狙いは間違っちゃいないというのはわかるんですが、やっぱ透けてみえちゃいけないだろう、と。
そういうのがみえちゃ、やっぱ売れないと思います。つくった側は「これは売れる」と思ってたのがまるわかりですもん。

だからといってアタシはこの楽曲を嫌いになれないんですね。もう何回聴いてもズンと入ってくるというか。なにしろいまだに肝をみつけられない。何がいいのかわからないのに「いい!」と思えるのはきっと何かがあるのでしょう。

楽曲の良し悪しって、おそらくマーケットにのるまでわかりにくいと思うんです。もちろんそれを判断できるのがすぐれたプロデューサーなんだろうけど、まぁ作詞者・作曲者・アレンジャーにはほとんど判断がつかないのではないかと思ってしまうんです。
大西ユカリにしても、淀川乱子にしても、(少しズレるがエゴ・ラッピンなんかも)つくっている段階ではいい仕事していると思うし、またライヴなんかだとものすごくいいんだろうなってのがわかるんです。でもCDというメディアになった時までそのよさが持続できていない。

当然それはプロデューサーの問題なんだろうけど、とにかくとっかかりとしてCDを聴いた人にとっては、なんだかものすごく味気ないものになってしまっている気がするんです。少なくともアタシはやたら淡白な感じがしました。
<昭和の歌謡曲>の再生産って、簡単なようで、すごく難しいはずなんですね。今でも30代以上の人の耳に残っている歌謡曲というのは、いわば<名曲大全集>なんです。それに太刀打ちするには相当のクオリティが必要だというのはわかっていただけると思います。

近年、この<昭和の歌謡曲>の再生産に成功した唯一の存在が椎名林檎でしょう。彼女の楽曲はロックの皮を被っていますが、本質的には歌謡曲であり、しかも「歌謡曲なんかほとんど聴いたことのない世代」にまで訴えかけることに成功した。はっきりいってこれは凄いことです。
椎名林檎がデビューする寸前、アタシは小さな出版社にいたんですが、はじめて評価用のデモテープ、特に「歌舞伎町の女王」を聴いた時は震えがきました。「ああとうとうここまでやる人がでてきたんだ」と。<ここまでやる>というのは、歌謡曲をメディアにのせることができるという意味です。

淀川乱子なんか特にそうだと思うんだけど、そんなにメディアにのる気がないんじゃないかなぁ。まったくの憶測だけど。でもそれが本当にいいことなのかアタシにはわからない。
というのもね、昔アタシはレゲエをちょろっとやってて、その時痛感したのが「誰もレゲエをメディアにのせようとしていない」ということだったんです。もちろんメディアにのった人もいますよ。ブギーマンとか三木道三とか。でもなんかあれも偶然なような気もするし。まぁ最近ではMINMIなんかはメディアにのっていこうという姿勢がありますけどね。

メディアに背を向けると、どうしても閉鎖的になるんですよ。やっぱり。「わかる人にわかってもらえればいい」みたいな姿勢だと、どんどんマスターベーションに近くなるというか。一見さんはついていけなくなる。
椎名林檎がよかったのは、こういう姿勢があんまりなかったことじゃないでしょうか。まぁアタシからすると福岡出身者(といってもいいでしょう)らしい上昇志向が、メディアにのせるということに直結したんだろうけど、それでも自分の趣味の世界をお金にかえたことにたいしては、アタシは素直に賞賛します。

で、やっぱり、どうせなら、大西ユカリも淀川乱子も、もっとメディアにのりやすい楽曲をつくってほしいなぁと。
で、やっぱり、どうせなら、林明日香は、メディアにどうのせるかどうかなんか無視したような<いい曲>をいっぱい歌ってほしいなぁと。

なんか正反対のことをいってるようですが、各々それぐらいでちょうどバランスがとれると思うのですよね。

たぶんこれが後々の「複眼単眼」につながる最初のエントリだと思います。
ただし、読み返すだけではっきりわかるのは、こういう文章を書き慣れてないからか「全体の構成」みたいなのをね、ボヤーっとでも考えてないのがまるわかりです。オチっつーかサゲも、ダブスタになったのを気づいたはいいものの、どうしていいかわからず無理矢理正当化したって感じだもん。
しっかりした構成表を作ってから、とかまったく思わないし、そんなのいまだにしたことないけど、本当にね、ボヤーっとでいいんですよボヤーっとで。ボヤーっとでも構成を考えてたらこんな「思いついたままに書きました」みたいにならないから。
ついでにもうひとつ。林明日香は10年後に「ake-kaze」のセルフカバーを出してますが(これはYouTubeでも普通に聴ける)、うーん、何というか、これが完成形なのか、と思うと、いやいやいや、と思ってしまう、というか。
これは個人的な意見だけど、2003年版と2013年版ってPVのロケ地が逆だよな。つか2003年版はロケ地の意味がわけわからん。歌詞とまったく関係ないし。




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