「大市民」を見て
FirstUPDATE2004.1.26
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 たぶん全国のクレージーキャッツ・フリークにとって、2004年1月25日放送の<NHKアーカイブス・「大市民」>の放送はちょっとした事件だったんじゃないでしょうか。
 アタシは当時、このドラマの存在自体知らなくて、まさか全盛期の植木等主演ドラマが保存されているなんて夢にも思ってませんでしたから。時代が時代だから当然フィルム収録。(モノクロなのは残念だけど)
 しかも、演出・和田勉!脚本・山田信夫!

 で、実際観ての感想。
 いやはや、マジでビックリしました。これはまさしく隠れた名作というヤツです。
 ジャンルは、・・・何になるんでしょうか。別に無理やりジャンル分けする必要はないんですが、しいていえば<スケッチ>になるのかなぁ。
 平凡な団地住まいの一家庭の一日を追っただけなんだけど、それが全然所帯臭くなってなくて、妙にモダンなんですよ。日本のドラマって子供がでるだけでジメジメしちゃうってケースが多いんだけど全然。ちゃんと子供の世界の残酷さも描いているし。(同時に子供の持つまっすぐな眼差しが描けているのが凄い)
 左幸子はもともといい女優さんだと思っていたんだけど、このドラマのサジ加減も実によかった。いい人になりすぎず、女性特有の気の強さと反転した気の弱さを両方表現していましたよねぇ。今こういうことできる女優っているのかな、と考えてしまいました。

 そして植木等。観るまで怖かったんですよ。なにぶん全盛期の作品でしょ。「全盛期の作品だったらいいじゃねぇか」とお思われるかもしれませんが、全盛期の仕事って案外やっつけだったりしますから。
 だから「別に植木等がやる必要あったの?」とか「無責任男の縮小再生産じゃないのか?」って可能性が高いだろうなぁと。
 でも違ってた。映画でもだいぶ後に「喜劇 ここから始まる物語」で真面目(?)なコメディをやってるけど、それよりもずっとよかった。
 ここにでている植木等は断じて無責任男の延長ではない。にもかかわらず植木等がやる必然性が猛烈に感じられる。というかこの役は植木等がやらないと意味がないとすら感じました。
 <モダン>で<ドライ>、そして<高笑い>という植木等の長所を全面的にいかしているにもかかわらず、無責任男とまったく違うキャラクターをつくりあげたスタッフにひたすら敬服します。
 特に和田勉!この人凄い人だったんだな。

 このドラマの本放送って、「作戦」シリーズ最高傑作である「クレージー大作戦」のすぐ後だったみたいだけど、たとえば、全員主演の「作戦」ものに「大市民」のような植木等主演の小品スケッチを併映、みたいな方向性はなかったんでしょうかねぇ。なかったんでしょうなぁ・・・。

その後、無事に「大市民」もメディア化されましたが、これ、放送当時(もちろんリアルタイムではなく2004年当時)、結構賛否両論だったんですよね。
アタシは面白いと思ったんだけど、東宝クレージー映画みたいなのを想像して見たら、そりゃ違うってなるわ。いや違うからこそアタシの評価も高いんだけど。




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