ミスター・トラ、と聞いてピンとくる人はどれくらいいるんだろうか。
阪神ファンだったとしても、1970~1990年代にMBSラジオを聴いてる、それも試合前から、でないと知らないような。当然radikoなんてない時代だから関西地方の人間に限られるしさ。
通称・ミスター・トラ、本名は唐渡吉則ってんですが、野球中継の前座番組としてね「唐渡吉則のトラ!トラ!トラ!タイガース!!」って番組をやってたんです。どうも最初期は覆面タレントで(もともと広告代理店の社長だったらしい)、ま、偽名っつーか本名を出さない策として「ミスター・トラ」なんて名乗ってたらしいんだけど、アタシが知った頃には番組の冒頭で自ら「ミスター・トラ、唐渡吉則です」と挨拶していた。アナウンサーから紹介される場合でも「ミスター・トラこと唐渡吉則さん」だったし。
プロ野球OBでもない、アナウンサーでもない、タレントでもない、なのに毎日先の番組やらレポーターとしてラジオに出ている。しかも阪神関連の時だけしか出ない。
いったい、何者なんだ、となって当然というか。
今もある阪神関連のレギュラー番組と言えば「熱血!タイガース党」(サンテレビ、オフシーズンのみ)だけです。少し前までABCで「虎バン!」もあったけどネットコンテンツに移行しました。
さらに2005年までは「週刊トラトラタイガース」なんてのもありました。
これが始まった時は衝撃的だった。アタシは前身番組だった「スポーツワイドショー ザ・プロ野球」から見てたんだけど、もうその頃からかなり阪神に肩入れした作りでね。
え?何も驚くようなことはないって?いやいや、これが4チャンネルとか6チャンネルとか、せいぜい8チャンネルなら驚きませんよ。けどこれは10チャンネル。関西地方で10チャンネルと言えば、よみうりテレビですから。
讀賣系列のチャンネルで阪神に肩入れするのはどんなもんか、と思っていたところに、今度は「週刊トラトラタイガース」ですよ。もう思いっきり阪神の番組。
いくら関西ローカルだからといっても、讀賣系列で阪神応援番組とか、よーやるわ、としか言いようがない。
「週刊トラトラタイガース」の前身「ザ・プロ野球」の放送が始まったのは1980年ですから、かなり古い。もしかしたら準キー局での阪神応援番組としては最古かもしれません。
ただUHF局(と言っても今の地デジがUHF波だからわかりづらいけど)まで拡げるなら1976年から「ガッツ!タイガース」という番組がサンテレビで放送されていました。
基本的なフォーマットは今の「熱血!タイガース党」によく似ています。何らかのテーマに沿って、VTRを交えながら前シーズンを振り返るっつーね。
司会はサンテレビボックス席での大半の試合で実況を担当した西澤暲(あきら)。そして今で言えば福もっさんのポジションにいたのは鎌田実でした。
福もっさんと鎌田実ではパーソナリティがぜんぜん違うから、あんな明るくて軽い番組じゃない。昔の鎌田実の解説を憶えておられる方ならイメージできると思いますが、良くいえばマジメ、悪くいえば暗い、という。
何だか鎌田実の悪口みたいになっちゃったけど、解説ぶりは地頭の良さが出た、的確なものでした。もっとも「ガッツ!タイガース」が始まった頃はまだサンテレビボックス席の解説はやっておらず(クマさんこと後藤次男がほぼひとりでまかなっていた)、鎌田実が解説陣に加わるのはたしか後藤次男が監督になった年(1978年)からだったと思います。(ただしWikipediaによれば1973年から解説陣に加わったとの記述あり)
司会の西澤暲はともかく、ゲストも女性アシスタントもなし、解説の鎌田実も地味、となったら、当然番組自体もタイガース党よりはるかに地味なものでした。
ただし、番組の後半にお遊びというかゲームのような企画があったんですが、CM、の前にこのコーナー!(武田訓佳ふうに)
「タイガース党」のCM前といえば「若虎に直撃!橋本航介です」のコーナーですが、「ガッツ!タイガース」では番組観覧者が「◯◯◯◯!ガッツ!タイガース!!」ってガナるのがお約束でね。
◯◯◯◯のところは自分の願望を言うんだけど、中には「田淵、来年はホームラン王獲ってや!ガッツ!タイガース!!」みたいなことを言う人もいたけど、やっぱほとんどの人は「来年(年明けからは今年)こそ優勝や!ガッツ!タイガース!!」となってしまう。ま、何かひと言ってなったら、そういうわなぁ。
まったくの余談だけど、今から30年くらい前、何かのイベントの時にバッファロー吾郎がこれをネタにしてて。ま、如何にもバッファロー吾郎が使いそうなネタですが、まったく野球に関係のない笑いのイベントで、何で声を揃えて「ガッツ!タイガース!!」と叫ばなあかんねん!いやオモロイんだけどね。
話を戻します。
タイガース党は普通のニュース番組風というか情報番組っぽい質素なセットですが、「ガッツ!タイガース」のセットは球場を模したものになっていました。
ちゃんと観客席があり、そこで番組観覧者が見てる、みたいな。つまり公開番組だったんですね。
で、これはタイガース党も同じだけど、セットの中(というか床)にバッターボックスとホームベースがあるんです。タイガース党の場合は野球塾みたいなコーナーでたまに使われるだけだけど、「ガッツ!タイガース」はそれを活かしたゲーム企画を毎週やっていたんです。
ホームベースの後ろには等身大のキャッチャー人形が置いてある。時代が時代なんで、もちろん背番号は22。つまり田淵人形っつーことになりますか。
その田淵人形に向かって小学生が今でいうところのストラックアウトみたいなゲームをやるコーナーがあったんです。ストラックアウトみたいにパネルを抜くんじゃなくて、ミットに当たればストライク、外れればボール、という。
ちゃんとスコアボードが用意されててね、得点経過やアウトカウント、ランナーの有無まで設定されている。もちろん9回、阪神リードみたいな設定なんだけど、これがかなりシブい設定なんですよ。
毎回鎌田実が設定を決めてたみたいなんだけど、小学生対象のお遊びコーナーでここまでシブい試合経過にする必要あんの?みたいな。相手打者も王とかじゃなくて高木守道とか。
ただでさえシブい出演者なのに、何もこんなとこまでシブくする必要ないのに。
さてさて、ここからこのエントリもシブいネタに入ります。
子供の頃、家では一般紙しかとってなかったんだけど、祖父の家で日刊スポーツ(以下ニッカン)をとっていた関係で、ニッカンはかなり親近感があったんですよ。
何でスポーツ新聞をとってたかって?そりゃあ競馬のためですよ。何しろうちの叔父たちは競馬の分析をしたいがばっかりにビデオデッキ(まだVHSがない時代ですよ)を買っちゃうような人たちだから。ま、新し物好きなのも大いにあるけど。
その頃(1970~1980年代)はニッカンが一番阪神の記事が充実していたんです。文章もちゃんとしてたし。
デイリー?あれはね、いろいろと、うーん。
たぶん阪神に興味のない人は決定的に誤解をしてると思うけど、デイリーは阪神ファンから見たら、いや少なくともアタシからすれば、あんまり面白くないんです。何というか客観性がないというか。
いや客観性皆無でもとにかく阪神アゲアゲの記事だけ書いてくれるんならいいけど、わりと憶測で余計なことを書いて足を引っ張ったりするし。
だからいまだにデイリーはあんまり好きではない。神戸新聞は好きなんだけどね。
ニッカンに話を戻します。
1980年代に入ってからかな、ニッカンに「一発ギャグ転」という6コマだったか8コマの漫画が掲載されていました。
作者は高岡凡太郎って人だけど、のちに「週刊ベースボール」にも連載を持ってたから知ってる人は知ってるはずです。
ま、阪神ネタが大半だったけど、一応仮名にしてあった。あきらかに阪神なんだけど、チームが関西キャッツになってたりして。もっとも面倒になったのか途中から「阪珍」とかになったけどね。何かなんJの蔑称みたいだな。
それはともかく、これが結構面白かったんですよ。ギャグもいくつか憶えてるし。
「野球選手に着せたい服」という回で「ヤクルト・井原=幼稚園のスモッグ」とか「広島・衣笠=毛皮」というネタや、「ライバルは?」という回で、中畑が「おそれ多くも長嶋さんです。チョンボだけなら」といった後に、インタビュアー「火野正平さんですね」篠塚「先にいうなよ」てなネタとかね。
たぶん若い人には篠塚=女たらしのイメージはまったくないんだろうけど、今の巨人でいうなら坂本なみの女好きのイメージだったのが篠塚でした。
他にも楢山節考よろしく、阪神の野村収を山に捨てに行くってのもあったなぁ。この漫画のせいでしばらく野村収のことを「じっちゃん」て呼んでましたから。
阪神タイガースの本は数あれど、阪神とメディアの関係性だけに特化した本はないですねぇ。井上章一の名著「阪神タイガースの正体」もメディア論に特化してるわけじゃないし。
誰かやってくれないかなぁ。かなり面白いと思うんだけど。あんたがやれって?まさか。大変すぎるわりに売れないのがわかりすぎだもん。
ま、75歳を過ぎて何もやることがなくなれば考えますが。
「ガッツ!タイガース」のことですが、カバー画像を見てもらってもわかるように、おそらくサンテレビは全部ではないにしろ、何本かは保存しているはずなんです。 あれ、「虎辞書なる」枠で再放送してくれないかな。試合映像だけじゃないから権利関係が難しそうだけど、それが無理ならせめて神戸駅の近くに出来た新社屋のロビーでいいから流して欲しい。見に行くから! |
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