何があったのかわかりませんけど、TSUTAYAの大型店舗に東宝のモノクロ時代の作品が大量に入荷しておりました。(現注・たぶん新宿店のことだと思う)
特に戦前のエノケン主演作が15本以上もあって正直ビビりました。今までレンタルでエノケン主演作はといえば「エノケンのとび助冒険旅行」(1949 新東宝・エノケンプロ)ぐらいしかなかったのに。
さっそく、ずっと以前から観たかった「男ありて」(1955・東宝)をレンタルして観させていただきました。
この作品は、一部で「邦画史上野球映画の最高傑作」と誉高いので、<ヤキウノウワゴト>(現注・当時、野球関係の駄文をこんなカテゴリ名にしていた)なる駄文を書いておるアタシとしてはほっておけないのです。
開巻していきなり「カッコウワルツ」が流れるでしょ?志村喬主演、三船敏郎共演ときて「カッコウワルツ」とくれば、どうしても大傑作「酔いどれ天使」を連想しますよそりゃ。わざとなのかなぁ。どっちにしろもうこれだけで期待がグッと高まったというか。
んで観終わった感想はといえば・・・、なんというか、傑作とかそういうたぐいの映画ではなかったです。
部分的に光る場面はあるんだけど、どうしても納得できないところがあって、点数を下げざるを得ないという感じですか。
具体的にいうと、藤木悠のキャラクターがよくわからない。もっとはっきりいえば藤木悠の芝居、ヘタすぎ。今までそんなにヘタな俳優だと思ったことなかったんだけど。
この映画、藤木悠扮する新人投手は一種の狂言回しである筈なんですよ。彼が破綻の種がいっぱいある家庭に混入して、それらの問題が表面に浮き上がるわけですよね。
物語の中盤まで、主役で監督役の志村喬に感情移入されては困るわけで、観客が感情移入すべきキャラクターは、家庭でも職場でも志村喬と関わりを持つ、藤木悠でなければならない。
なのに藤木悠のキャラクターが全然わからないんです。
すごく軟派でドライな面を見せたかと思えば、アツい部分をもっていたりする。別にそれでもいいんだけど、脈略なくどっちも面も顔を出すもんだから「表面上は軟派でドライ、しかし内にはアツいものを秘めている」となっていないんですね。正直あれじゃただの<アプレ>ですよ。
特に萎えたのが、監督の志村喬に殴られたあと「親にも打たれたことないのに!」とあまりにもナヨナヨしたことをいうでしょ?もちろん台本にある台詞なんだろうけど、あそこで感情移入されることを拒否されたら、すぐ後のシーンでの監督の妻と娘の行動が莫迦らしくみえちゃうんですよ。
せめてもうちょっと藤木悠がうまく演ってくれりゃいいんだけど、あれだけヒドい演技されたらそりゃ醒めますよ。最後に泣きながら監督に挨拶にいく場面なんかコント並だったし。
また志村喬と三船敏郎が巧いから、余計目立っちゃうんですよね。(志村喬の演技は巧いとはすこし違うのだが)
じゃあ全部が全部ダメな映画かといえばそんなことはなくて、火葬場のシーンね、あれは震えがきましたよ。
志村喬が淡々と「こうやってる間に焼かれるなんて便利になった」みたいなこというでしょ。お茶のみながら。で外に出てみると煙突がら煙が上がっててね。志村喬の後ろに若い女性がを背負った乳呑児をあやしている。
なんといったらいいんでしょうね。ちょっと気持ち悪いくらいのリアリズムですよ。あれ、もしVTRならそんなでもないんだろうけど、フィルムでされると妙な怖さがあるんですね。
野球シーンはスタントイン使ってる上、ほとんど役者にはプレーさせていないせいかソツなく撮れているし、それらしいユニホーム着ているし、球場も本物のだからね。だから結構それっぽいです。(後楽園球場という設定だけど、本当はナゴヤ球場で撮影されたらしい)
それに三船敏郎ってやっぱメチャクチャカッコいいですよ。彼が出てきただけで画面(スクリーン)に色気が発ちこめるというか。三船敏郎はこういうヒーロー然としていない役をやった時の方がそれが際立ちますね。
演出もシナリオも大筋は悪くない。お好み焼き屋で復帰が決まった志村喬が手帳を開いてチームのスケジュールを確認するシーンとかもよかったし。
だからねぇ、もう本当に惜しい作品というか。ちょっとの差で佳作にもなってない。本当にちょっとの差なんだけどね。
「男ありて」も長く再見してないなぁ。この頃は興味なかった、でも今は興味のあることで気になるところはあるんだけどね。 もうひとつ。冒頭で新宿のTSUTAYAでビデオを借りた、というような話をしているのですが、アタシはこの時点で一時的に神戸に戻ってたはずなんですよ。 たまたま2004年開けのタイミングで書いてるけど、実際はもっと前の話なのか、それとも、まァまだちょくちょく東京に行く用事はあったんですが、その時にでも見かけたのか? でも後者ならそれはそれでおかしいっていうか、何しろ「ビデオを<借りた>」と言ってるわけで、ビデオデッキを持って東京まで行くわけないし、なんだこの謎。 |
---|
@Scribble #Scribble2004 #東宝/P.C.L. #映画 #プロ野球2004年 #1950年代 TSUTAYA 新宿 男ありて 単ページ PostScript @戦前 #2000年代 #施設 #東京 #物理メディア #神戸 #黒澤明 yabuniramiJAPAN